大阪地方裁判所 昭和57年(ワ)7223号 判決
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【説明】
同じ商品表示に関して商品主体混同行為を認め、差止請求および信用回復措置請求を認容した(擬制自白)東京地判昭58.12.23(本誌五一九号二五九頁)がある。
【判旨】
一<証拠>によれば、原告は鞄類及び袋物等の製造、販売を業とするフランス法人であること、原告の製造、販売する鞄類及び袋物等(原告商品)にはその生地に別紙目録(一)(二)の表示(本件(一)(二)の表示)が図柄模様として連続的に付されていること、原告が永年にわたり本件(一)(二)の表示が付された原告商品を日本へ輸出して販売してきた結果、本件(一)(二)の表示(図柄模様として連続したものを含む)は遅くとも昭和五二年当初には原告商品を示すものとして日本国内の取引者、需要者間で広く認識されるに至つたこと、被告会社は、その生地に本件(一)(二)の表示と同一の表示が図柄模様として連続的に付されている鞄類及び袋物等(本件商品)を、昭和五二年一一月頃越本商事から仕入れて第三者に販売したこと、本件商品はそのように原告商品と同一の表示が用いられているため、両者は酷似し、ために原告商品と誤認混同を生ぜしめ、原告はこれによつて営業上の利益を害せられて損害を蒙つたこと、以上の事実が認められる。
<反証判断略>
二<証拠>によれば、被告平井及び天野の両名は、最初に越本が本件商品の売込に来たときに、同人から、右商品は、スイスのマフィアがルイ・ヴィトンと話しをつけて原材料を譲り受け、それをスイスで加工して日本へ輸出したものであるなどという、右商品が果して真正な原告商品であるか否か大いに疑問のある話しを聞かされていたことが認められるので、仮に被告平井及び天野の両名が、越本商事から仕入れた本件商品が偽物ではなく真正品であると信じていたとしても、そのように信じていたことについては重大な過失があつたものというべきである。
そうすると、被告会社は、本件商品を販売することが不正競争行為になることを重大な過失により知らないでこれを販売したのであるから、不正競争防止法一条一項一号、一条の二第一項の規定により、右販売行為によつて原告が蒙つた損害を賠償する責任があり、又、被告平井は当時被告会社の代表取締役であり、重大な過失により代表取締役としての職責を懈怠し、被告会社の前記不正競争行為を発生させたのであるから、被告平井も、商法二六六条ノ三の規定により、被告会社と連帯して原告の損害を賠償する責任がある。
三そこで、被告会社の不正競争行為によつて原告が蒙つた損害額について考察する。
<証拠>によれば、右供述調書の末尾に添付されている「コピー物(ルイ・ヴィトン)売上表」は、越本の妻が記帳していた売掛元帳に基づき同女が作成したものであり、極めて信憑性の高いものであるが、同表には「大日本商事(株) S52.11.25 二八七六個 二二一四万八五〇〇円」と記載されていること、越本は、右供述調書の中で、同人が扱つた偽造ルイ・ヴィトン商品(総数で一万一六九九個)は、被告会社に販売した分(二八七六個)も含めて全部販売しており、返品を受けたものはない旨自供していることが認められ、又、<証拠>によれば、越本が扱つていた本件商品を含む偽造ルイ・ヴィトン商品は、ルイ・ヴィトンの偽物商品のなかでは非常によくできた製品で、末端での小売価格が真正品の二割引位の値段で売られていることが認められ、又、<証拠>によれば、天野は越本から、本件商品を一個当たり一万五〇〇〇円から二万五〇〇〇円位の価格で売るようにと言われていたことが認められ、更に前掲甲第七号証によれば、越本商事自身も被告会社以外の殆んどの買主に対しては、本件商品と同種の偽造ルイ・ヴィトン商品を一個当たり一万数千円、場合によれば二万円以上の価格で売つていたことが認められる。
以上の事実によれば、被告会社は、昭和五二年一一月越本商事から本件商品二八七六個を代金二二一四万八五〇〇円(一個当たり平均七七〇一円)で仕入れ、これを少なくとも原告が主張している四二〇八万二一五〇円(一個当たり平均一万四六三二円)以上で販売し、一九九三万三六五〇円以上の荒利益を得たことが認められ、右認定に反する<証拠>は前掲各証拠に照らして措信しがたい。そして、<証拠>によれば、本件(一)(二)の表示は、原告の永年にわたる企業努力により日本国内の取引者、需要者間で広く認識せられ、強力な顧客吸引力を取得した著名標章であることが認められるので、被告会社は、原告商品と酷示した本件商品を販売するに当たつては、広告宣伝費等を全く要せずに原告商品の名声にただ乗りして極めて容易に販売できたものと推測され、又、その販売に要した人件費や一般管理費も極めて少額な金額で済んだものと推測されるところ、被告会社は本件商品を販売して一九九三万三六五〇円以上の荒利益を得たのであるから、少なくとも原告が主張している一三二八万九一〇〇円を下らない純利益を得たものと認められる。
被告会社が本件商品を販売できたのは、本件商品が日本国内の取引者、需要者間で広く認識されている原告商品と酷似し、一般の消費者が本件商品を原告商品と誤認混同して本件商品を購入したためであると考えられることを考慮すると、もし被告会社の右販売行為がなければ、原告はその頃日本国内で実際に販売したよりも更に多くの原告商品を販売し、前認定の被告会社が得た純利益と同程度の純利益はあげ得た筈であると推認することができる。そうだとすると、被告会社の不正競争行為により、原告は一三二八万九一〇〇円の営業上の損害を蒙つたことが認められる。
四してみると、被告らは連帯して原告に対し、損害賠償金一三二八万九一〇〇円と、これに対する訴状送達の翌日である昭和五七年九月二二日から完済まで年五分の割合による遅延損害金の支払義務があり、原告の本訴請求はすべて理由があ<る。>
(潮久郎 紙浦健二 徳永幸藏)